- 経理部は机に座って誰とも話さず、黙々と作業するのでは?
- 簿記の資格を持っていたら良いのでは?
実際に経理の世界ではコミュニケーション能力が不可欠です。多くの専門家がコミュニケーションの重要性を認めています。
この記事では、経理におけるコミュニケーションの必要性と具体的なスキル向上方法について解説します。
記事を読めば、円滑な業務遂行と効果的な関係構築のためのコツが明らかになります。
経理におけるコミュニケーション能力の重要性
経理部で最低限必要なスキルは、簿記、Excel、そしてコミュニケーション能力です。
経理部は専門職なので、
- 簿記などの専門知識があればいいんでしょ?
- 経理部は机に座って、もくもく仕事すればいいのでは?
という誤解を多くの方がされているかもしれませんが、実は違います。
他部署から経理処理や予算の使い方について相談を受けたり、他部署へ確認事項を依頼したり、いろんな場面でコミュニケーション能力が必要になってきます。
- 明確かつ簡潔なメッセージで誤解を防ぐ
- 専門知識を分かりやすく伝える
- 良好なコミュニケーションをとる
経理部門において仕事を円滑に進めるためにコミュニケーション能力は非常に大切になります。
経理部は他部署と連携しながら動いている
経理部はほぼ全ての部署と繋がっています。
経理部で作成した決算データは以下のような場面で使用されます。
- 役員に届けられ、経営判断の材料
- 事業部や営業部で業績評価の元データ
- 予算と実績をExcelで比較する
経理部は会社経営を数値を使って、裏から支援するバックオフィスの立場として活躍します。
そして全部署と関わりを持つため、多くの関係者に配慮した行動が求められます。
経理部の一つ一つの行動が他の関係者に影響を与えている、ということを常に意識しておきましょう。
仕事を円滑に進めるうえで重要な調整
経理の仕事は他のメンバーや他部署に依頼することが多いです。何も配慮せずに適当な依頼を繰り返していれば必ずどこかでつまづきます。
例えば、多くの関係者を巻き込み、既存業務を大きく変えようとするプロジェクトは必ずどこかで炎上します。
- 一方の利益が他方の不利益だったり
- 内容が納得できない
という関係者が必ず現れるからです。このように関係者が多くなればなるほど、炎上リスクは高まり、円滑に仕事が進まなくなります。
経理の仕事は、一人で完結するものではありません。
スムーズに仕事を進めるためのコツは調整業務をしながら仕事を進めることです。調整業務は以下のような行動です。
- 認識合わせ:誤解を解いたり、必要性を周知する
- 期待値調整:過度な期待があれば下げておく
- 妥協点の検討:お互いがギリギリ妥協できる点を探す
経理部の仕事の進め方で一番大事なのは調整業務です。
チームで成功体験を共有し、モチベーションを向上させることも大切です。
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関係部署と上手く良好な関係を築く
経理部は単にパソコン作業のデスクワークだけではありません。
日々ミーティングなどに出席し、経理部としての意見をいう必要があり、コミュニケーション能力が必要とされます。
経理部で多く話す機会があるのは、事業部とのミーティングです。以下のような例です。
新サービスをリリースするが、売上や費用はどの時点で計上すべきかなど、会計処理の相談を受けます。作成段階から経理部もミーティングに入って事業部と一緒に取引スキームを考えて採算管理の方法などを模索することもあります。
経理部では、
- 悪いことは悪いと突き返しつつ
- 自分の意見だけを押し通すのではなく
お互いの部署の妥協点を一緒に探り合うことができるコミュニケーションが大切です。
経理業務におけるコミュニケーションの種類
経理部では、コミュニケーション能力が必須となります。
- 内部コミュニケーション:同僚とのやり取り
- 上層部への報告:管理職へのコミュニケーションスキル
- 外部コミュニケーション:取引先との交渉術
部門内のやり取りだけでなく、他部門や外部機関とのコミュニケーションも必要になります。
» 経理の仕事内容
同僚やチームメンバーとの横のコミュニケーション
同僚やチームメンバーとのコミュニケーション(横のコミュニケーション)は、円滑なプロジェクトを遂行するうえで欠かせません。
身内感覚での接し方は、打ち解けた雰囲気を作り出すうえで役立ちますが、「親しき仲にも礼儀あり」という言葉もありますが、相手への敬意を持って接することが重要です。
同僚と良好なコミュニケーションを図るためのポイントは以下のとおりです。
- 相手の目を見て話す
- 話に耳を傾け、関心を持って聞く
- 話しやすい環境を整える
- 相手に誠意を感じさせる言葉づかい
同僚は上司や部下と接するよりも気を使わなくても良い分、伝え方を工夫しなければ、人間関係に支障をきたす可能性もあります。
自分の言いたいことを伝えるだけでなく、相手の話に耳を傾け、共感を示すことが、信頼関係を築く上で欠かせません。
誤解や衝突が生じたときは、早期に対話を通じて解決を図ることが、長期的に良好な関係を保つために重要です。
上司との縦のコミュニケーション
新入社員や経験の浅い社員にとっては、上司との会話が大半を占めます。
立場の違いだけでなく、職場での経験の浅さから、わからないことを質問する機会も多いです。
上司とのコミュニケーションを円滑に進めるための以下の手段を、ひとつの技術として覚えておくことは大切です。
- 積極的な質問と報告:業務の進捗をスムーズにし、ミスの防止に繋がります
- 自ら学び、成長する姿勢を持つ:上司からの信頼も得られます
- フィードバックの積極的な受け入れ:自己成長のための貴重な機会と捉える
縦のコミュニケーションを円滑に行うためには、相互の理解と尊重することが大切です。
上司と部下がそれぞれの役割を理解し、適切なコミュニケーションを心がけることで、職場の生産性と満足度を高めることができるでしょう。
会社にはたくさんの外部パートナーがいる
会社では、従業員のリソースで賄えないものを外部に委託することがよくあります。
経理部がよく接するのは、会計事務所、システム会社、コンサル会社などの外部パートナーですが、気をつけておくべきこともあります。
熱心に自分事として最高のサービスを提供してくれる外部パートナーなら良いのですが、以下のような外部パートナーも残念ながらいます。
- クオリティの低いサービス
- メールのレスポンスが遅い
- 電話対応が悪い
外部パートナーと上手く付き合うためには、彼らが提供するサービスを受け入れっぱなしではなく、サービスの良いところ、悪いところを毎回チェックすることです。
良かったところ、改善してほしい部分をしっかりとフィードバックしましょう。両者の関係は対等なので、お互いが業務をやりやすい環境を作るようにして、Win-Winで良好な関係を築くことが大事です。
コミュニケーション能力を高めるための基本原則
コミュニケーション能力は、経理業務を含むあらゆる職種で求められる重要なスキルです。
人と人とのやり取りでは
- 相手に自分の考えを正しく伝えること
- 相手の言っていることを正確に理解すること
が不可欠だからです。
2つの能力を高めるためには以下の基本原則を理解し、実践することが大切です。
- アクティブリスニングの実践
- 明確で効果的なメッセージング
- ノンバーバルスキルの重要性
上記のスキルを日々の業務で活かし続けるためには、適切な環境作りが必要です。
コミュニケーション能力を向上させることは、経理業務の効率化はもちろん、職場での人間関係を良好に保つためにも役立ちます。
聴く力:アクティブリスニングの実践
経理業務におけるコミュニケーション能力向上には、アクティブリスニングが有効です。
アクティブリスニングとは、会話をする際に相手の話をただひたすら聞き続けるのではなく、相手が伝えたい本質的な事や感情を汲み取り、主体的に内容を把握するのに役立ちます。
アクティブリスニングでは、相手に寄り添って話を聞くだけではなく、共感していることを話し手に伝えながら話を聞くことが重要とされています。
自分に共感してもらえる人には自分の意見を発信しやすくなり、本音を引き出しやすくなるという観点から、共感する姿勢を意識しましょう。
- 話し手と同じ立場に立って、相手の気持ちを理解する
- 相手の目を見て相槌を打ちながら話を聞く姿勢
アクティブリスニングは、社員の考えや本音を引き出すときに効果を発揮し、職場のコミュニケーション能力の向上に役立ちます。
明確な伝達:明瞭で効果的なメッセージング
聞き手が情報を正しく理解し、適切な行動をとるために不可欠な「明確な伝達」。
実現するには、簡潔かつ要点を押さえたメッセージを伝えることが重要です。複雑なデータや専門用語はできるだけ分かりやすい言葉で説明し、聞き手の理解度を高めることが求められます。
重要な情報は強調して伝えることで、見落としや誤解のリスクを減らすことが可能です。聞き手のレベルやニーズに合わせたコミュニケーションを心がけることも大切。相手が情報を受け入れやすくなり、コミュニケーションの効果が向上するからです。
情報の整理と構造化にも役立ちます。情報の適切な整理と論理的な構造化を図ることで、メッセージがより理解しやすくなるからです。
非言語的コミュニケーション:ノンバーバルスキルの重要性
コミュニケーション能力は言葉だけでなく、非言語的な要素も大きな役割を果たします。
非言語的コミュニケーション(ノンバーバルスキル)は相手の態度や感情を読み取り、信頼関係を築くのに不可欠なスキルです。
実際にコミュニケーションの大部分は、下記のような言葉以外の伝達方法で成り立っています。
- ボディランゲージ
- 顔の表情
- 視線の使い方
- ジェスチャー
以上の非言語的な要素を適切に使うことで誤解を防ぎ、より明確なメッセージを伝えることが可能です。
しかし、スキルは文化的背景によって異なる場合も。相手の文化や習慣を理解し、適切に対応することも大切です。非言語的コミュニケーションを適切に使うことで対人関係での誤解を避け、より効果的なコミュニケーションが促進されます。
コミュニケーション能力向上のための環境作り
快適で開放的な環境作りもコミュニケーション能力を高めるために必要な事項の1つ。以下の項目を実践することでコミュニケーション能力向上につながります。
- オープンスペースを設ける:気軽にコミュニケーションを促す
- ミーティングルームの充実:プライバシーを守りながら意義ある議論を行うことが可能
- リラックスできる休憩エリアの提供:非公式の対話が生まれやすくなる効果
- 社内チャットやビデオ会議ソフトなどのコミュニケーションツールの整備:遠隔地とのやり取りに役立つ
- チームビルディング活動やワークショップを定期的に開催:チームの結束を強化
- 職場内のノイズを減らす:集中しやすい環境を作り出す
- 情報共有システムの充実:透明性を高め、誤解や混乱を防ぐ
- 経験豊富なメンターやコーチを配置:個々人のスキル向上をサポート
- 多様性とインクルージョンを重視:すべての従業員が声を上げやすい文化を育成
- フィードバックを積極的に求める:結果を基に改善策を実施
経理におけるコミュニケーションスキル向上の方法(実践編)
経理業務におけるスムーズな進行には、コミュニケーションスキルが欠かせません。経理業務に従事する人々には、コミュニケーション能力の向上が求められます。具体的な実践の仕方は、次のような方法です。
基本となるのは、簿記や会計の知識を深めること。
知識を深めることで専門用語を的確に理解し、明確に説明することができるからです。コミュニケーションの土台作りにつながります。
チーム内の情報共有を促進し、業務効率を高める効果がある「報告・連絡・相談(HoRenSo)の原則の徹底」。フィードバックを受け入れ、他者の意見を積極的に求めることで、自己成長を促進できます。
» 簿記資格取得のメリットと効果的な学習方法
コミュニケーションスキルは日常業務だけでなく、ミーティングやプレゼンテーションにおいても役立ちます。有効なコミュニケーションを通じて、チームメンバーやステークホルダーとの信頼関係を築き、経理業務の品質向上に寄与することが可能です。
継続的な努力と実践によって達成される「コミュニケーションスキルの向上」。経理部門で働く皆さんが実践方法を日々の業務に活かし、より効果的なコミュニケーションが取れるようになることを期待しています。
簿記や会計知識を活かした説明能力の強化
簿記や会計知識を活かすためには、複雑な財務情報を分かりやすく伝えるスキルが不可欠。スキルを磨くには、まず会計の基本原則をしっかりと理解しましょう。基本原則を理解することで、正確かつクリアな情報を提供することができます。
理解を深めるには、分かりやすい言葉を使い、必要に応じて実例や視覚的な資料を交えて説明すると効果的です。相手の知識レベルに合わせた説明を心がけることも、スムーズなコミュニケーションには欠かせません。
リスナーからの質問には、準備をして簡潔で正確な回答を提供する必要があります。信頼を築く上で非常に効果的な方法だからです。チャートやグラフなどのビジュアルエイドを駆使して、数字に意味を持たせることで、会計データをより理解しやすくします。リスナーの反応に注意を払い、彼らが情報を理解しているかどうかを確認することも大切です。
複雑な財務情報を分かりやすく伝えるスキルは、継続的な学習と実践を通じて強化することができます。簿記や会計知識は経理業務において非常に価値がありますが、効果的に伝えられなければ価値は活かされません。知識を活かした説明能力を強化することが、非常に重要です。
報告・連絡・相談(HoRenSo)の効果的な使い方
報告・連絡・相談(HoRenSo)は、経理業務におけるコミュニケーションの基本となる手法。効果的に活用することで仕事の進行をスムーズにし、トラブルを未然に防ぐからです。
効果的な使い方は、まず定期的に進捗状況を報告し、管理者が業務の進行具合を把握できるようにすることが挙げられます。重要な情報は、適切なタイミングでチームメンバーに連絡し、共有することが重要です。問題や不明点がある場合は、迅速な解決策を見つけるためにすぐに相談することが求められます。
上層部との信頼関係を築く上でも非常に重要な役割を果たす「HoRenSoの実践」。信頼を得ることで意思決定が迅速化し、ミスの防止につながるのです。チーム内のコミュニケーションを活性化させ、メンバー間の協力を促進する効果があります。
変化する環境や状況に柔軟に対応する情報共有手段としての効果も。ステークホルダーとの協力関係を築きながらリスクを管理する上でも、HoRenSoは有効な手法です。適切に手法を実践することで、経理業務の効率化と品質の向上を図ることができます。
フィードバックの受け取りと提供
フィードバックは、経理業務の改善と個人の成長に役立つ重要な要素。ポジティブな姿勢でフィードバックを受け入れることは、効果的なコミュニケーションの一つとなるからです。
構築的な批評を提供する際は、具体的かつ明確に行うのがおすすめ。実務における改善点を明確にするのに役立ちます。定期的なフィードバックのセッションを設けることで、コミュニケーションが継続的に行われる環境を整えることが可能です。
双方向のコミュニケーションは、オープンな対話を促す方法。チーム内の信頼関係を築き上げる効果があります。フィードバックを行動に移すための計画を立てることで、具体的な行動変化を促進。チーム内のフィードバック文化を育てることができます。
フィードバックを通じて継続的な学習と成長を支援することは、業務効率化だけでなく個々のスキルアップにもつながるため、非常に大切です。
まとめ
経理において、コミュニケーション能力は業務の効率化やチームワークの向上に大きく寄与する要素です。
内部での報告や外部との交渉など、多岐にわたるシーンで欠かせない能力だからです。業務遂行だけでなく、リスク管理や問題解決にも深く関わっています。
経理専門の知識を駆使した説明やHoRenSo、フィードバックの技術を磨くことで、コミュニケーション能力を高めることが可能です。経理部門が組織内外のステークホルダーと効果的な関係を構築し、より良いビジネス環境を築くことに貢献することが期待されます。
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